最初に打ち明けよう。僕は5ピースバンドRiddim Saunterのメンバーの一人にビールを奢ってもらった。その日バンドは、Go!Teamのゲストとして恵比寿のリキッドルームを盛り上げた。奢ってもらったのはその数時間後、メンバーと僕が渋谷で火照った体を冷ましていた時のことだった。それとは別の夜、僕らをもてなし打ち解ける手助けをしてくれた彼の友人を僕はつい冷やかしてしまったのだが、そのことですら許してくれた。フレンドリーなメンバーが作り出す和やかな雰囲気、自虐的なユーモア、ステージを降りても固く結ばれた強い絆。その全てが相俟って、冗談の言い合いが許されるほど親しげな雰囲気の中、ビールを片手に会話が弾んだのだった。
話をしたのは日本で有名なギタリスト(唯一自分でも認識していることのようだ)の一人、浜田将充だ。彼は情熱的なミュージシャンでありながら、次のライブをまるで最後のライブのように楽しみにする少年の心を持ち、日常でもステージ上と変わらず明るい存在感のある青年であり、そしてお洒落なシャツに身を包む謙虚で控えめな大人の男性なのだ。
会話の間、彼はRiddim Saunter(由来に関しては後に説明)というバンド名には触れたがらなかった。その名が要注目バンドというキャッチと共に知られるようになったのはフジロックでのこと。ライブへの情熱は誰の目にも明らかだった。バンドにとってもフジロックは思い出深い聖地となった。
バンドのホームページには、東京の音楽シーンで定評を得るきっかけとなったライブショーのことが書かれている。その頃、スカコアからDIYインディーズへとジャンルをシフトした時期だった。このライブを見てすっかり惚れ込んだGo!Teamは、2008年の日本初ライブ時にゲストとして彼らを迎え入れた。そこで高評価を受け、さらに多くの人に名が広まったのだ。同年のフジロック参加バンドを探していたプロモーターにとっても見逃せない瞬間だった。
浜さん(僕らは親しい仲になりつつある)はこう語る。「フェスの前日から最終日までの4日間はその年で一番興奮した」。その夜のステージで苗場の山々の美しい景色に勝ったのは次の3つ。「他の参加バンドのライブを観ること、人との出会い、そしてビールを飲むこと!」 そこに、ギタリストの佐藤寛がすました顔で突然、横から釘を刺すように言った。「それからキャンプもね」。
多くの人が言うように、面倒が付き物のキャンプ。でも彼らにはこれしか方法がないのだ。「僕らは毎年、仲間内の大人数グループでキャンプをする。通常はフェスに出かけてライブを観るのが中心だけれど、ある時、帰ってくると風と雨で僕らのテントが水浸しに。バッグもびしょ濡れになっていて、かなりショックだった。すごく疲れていたし、最悪な気分だったから、この時ばかりはテントを背にパーティーを始めて、ビールを飲み続けるしかなかったんだ」。
フェスでの経験を話してほしいと頼んだのだが、話しているうちに、彼らのステージ上でのエネルギッシュな魅力が蘇ってきた。「テントはそのまま放ったらかし。泥のことは忘れて、テントの前で朝まで飲み続けた。フェスの中でも最高の思い出のひとつかな!」浜さんは去年、ホワイトステージで鮮烈な印象を残した。雨が付き物のフジロックで珍しく晴れるものなら、サングラスと日よけ帽子は必須アイテムになる。「あの時の眺めは最高だったよ。ステージまで歩く道で胸が熱くなった。思わず泣けてきちゃって、涙を隠すためにサングラスをかけておけばよかったと思ったよ!」あらゆる音楽のテイストに影響を受けてきたことがバンドの歴史とバンド名から伺える。バンドが結成された頃はヴォーカルのKC(田中啓史)がレゲエに熱を入れていた時期だった。バンド名はKCが敬愛するミュージシャンがよく使う言葉に由来している。
「そのミュージシャンは‘Riddim’(ジャマイカ語でリズムの意)という一語で、色んなことを表現してた」と、浜さんは語る。「その一語に完璧に、しっくりと合うのが‘Saunter’(英語でぶらぶら歩くの意)だった。リズムが‘ぶらぶら歩く’、‘さまよい歩く’…」おそらくフェスで見るバンドを選ぶことも、「さまよい歩く」ことと重ねて考えられるだろう。浜さんが選ぶ今年の「見逃せないバンド」は―「本音を言えば、全てのバンドを見逃したくない。ステージ間の騒がしい音も全部ね。だけど特に観たいのはManu ChaoとLa Ventura, それからJames Holdenかな」Riddim Saunterはトランペットからターンテーブル、さらにフルートまでを巧みに操り楽曲に取り入れる。バックカタログはすでにコレクションと呼べるほどの枚数になっている。3枚のスタジオ・アルバム、そしてMatias Tellex(ノルウェー)、SoftLightes(アメリカ)、33HZ(アメリカ)等の海外アーティストと競演したリミックスアルバム、さらにアコースティックアルバムが発表されている。アルバム全てに表現されたそのスキル。フジロックでのお披露目をメンバー自身も楽しみにしているはずだ。
7月4日に行われるユニット代官山での7th Anniversary Live Specialは、RiddimSaunterにとってはフジロックに向けての良いウォームアップになるだろう。クラブを離れて演奏する機会が数週間後に迫っているのだ。さらに今年はRiddim Saunterというバンド名を新たな形で目にする機会も多いだろう。「カジヒデキとリディム・サウンター」が東京のライブハウスで数回のライブを行う予定なのだ。このバンドはカジヒデキをメンバーに迎えた6ピースバンドだ。土曜/日曜日の午後、ホワイト/グリーン/レッドステージでのライブに合わせ、キャンプサイトで彼らの即興演奏を耳にする機会が期待できる。
フジロック・フェスティバル (FUJI ROCK FESTIVAL) 7月29日(金) 30日(土) 7月31(日)
日通し券:¥39,800(税込) ⇒ 【先行販売特別価格】¥39,000(税込)
1日券 ¥16,800(各日限定 10,000枚)
INFO: フジロック・フェスティバル
翻訳:永田 衣緒菜
2011年7月25日
