お気に入りのレコード店で目についたジャケットの一枚を手に取り、試しに聞いてみると、ユニークなバンドを見つけてしまったことに気づき、うっとりして立ちつくしてしまう ― 夢に見る瞬間だ。これがメージーサイド出身のエレクトロ・ロックバンドLadytronと筆者との恋物語の始まりだった。彼らはこの11年、人気の波に乗りつつも、音楽業界の流行という潮の満ち干きに足元をすくわれることも、過去のアーティストとして分類されることもなくここまでやってきた。最新作”Gravity The Seducer”は、Brian Enoに「英国ポップ・ミュージックの最高作品」と言わしめた秀逸な作品群に新たに加わることになる。そこで、立ち上げ時からのメンバーReuben Wuをつかまえ、バンドについて質問攻めをすることに。
さて、ニュー・アルバムのリリースおめでとうございます。Ladytronを組んだとき、ここまで長続きすると思っていましたか?
全然。面白半分でやり始めただけだったのに、あれからすでに人生のうち12年も費やしているなんて。
みなさんのことについてよく、エレクトロクラッシュ・ムーヴメントの勢いに乗って有名になったと書かれているのを目にしますが、これはご自身でもそう思われていますか?
エレクトロクラッシュが出てきたときにはすでにファースト・アルバムを出していて、第2作目の制作に入っている頃だった。僕らは完全にエレクトロクラッシュのパイオニアと位置づけられているようだけど、このムーヴメントはルックス、音楽、何をとっても正直目新しいものではなかったね。いずれにしても僕らは作詞、制作ともに他のバンドとは一線を画して行っていたし、彼らとは同じ空間で活動していた気はしないんだ。
バンドの初期に、日本から影響を受けたとお聞きしていますが、いまだに何かその影響はあるのでしょうか?
日本のバンビーニというレーベルから出した最初のEP盤を、Steve Prossが東京で見つけたことが彼のレーベルと契約を結ぶきっかけになったんだ。彼はのちに僕らにアメリカで成功の機会を与えてくれた恩人。最も、当初は僕らのことを日本のアーティストと思ったらしいけど。この出会いが僕らのキャリアの上で非常に重要な出来事となった。Dannyは日本へ何度かDJをしに行っているけど、バンドとして演奏をしたことはまだない。ぜひ、日本でイベントをしたいと思っているよ。
他のたくさんのバンドが出てきては消えていく中、どうして皆さんは生き残っていらっしゃると思いますか?
僕らは、時間の流れに応じてバンドとして進化し続けてきたと思う。3つのアルバムの制作を経てやっと、自らこうと言えるアイデンティティに辿り着けた気がする。3作目のアルバムの後、ようやくバンドらしいバンドになったと友人には言われるくらい。確固たるファンがいてくれたことも有難いね。
Gravity the Seducerは直近の2作 “Velocifero” そして “Witching Hour”と比べて、だいぶソフトな気がしますが、これは意図されたことですか?
そうだね。これまでのアルバムとは対照的な作品を作りたかった、より抽象的でどこか映画を彷彿とさせるような作品をね。1年かけてツアーをしている最中に、唯一作業の出来る場、そう頭の中で新しい曲を書き始めていたね。
この作品はどこからインスピレーションを受けて作られたものなのですか?
全て。何気ない生活の中からかな。
皆さんはこれからもアナログのバンドであり続けると思いますか、それともデジタル・テクノロジーが徐々に忍び寄ってきているのでしょうか?
これまでもずっと、制作の段階でデジタルの力は借りていたし、完全にアナログであり続ける、っていうのはあまりに非現実的。僕らは、過去のものを咀嚼した上で常に現代的であろうとしてきた。アナログってことに特別こだわろうとしているわけでもない。もちろんアナログは好きだけれど、デジタルの技術なしでは今と同じことはできていなかったと思うしね。
Ladytronのアルバム、 Gravity the Seducerは現在発売中。
執筆:Mark Birtles
翻訳:小堤 明日香
2011年11月17日
