さて、もういい加減分かった。フジ・ロックへ行くのも今年で3度目となったが、この3日間は雨に濡れることから逃れられないという事実を認めよう。だからといってこの雨のせいで、すでに国内の他の事情の影響を受けていたフェスティバルの観客が意気消沈したり、ライブの質が落ちたりなんてことはもちろん一切なかった。予想された通り、フェスティバルの来場者数は例年に比べ減少したが、これが放射能を恐れてのことなのか、アーティストのキャンセルが次いだためにいま一つだったラインナップのせいなのかは定かではない。しかし数の上では至らなくとも、フェスティバル会場は盛り上がりを見せ、ときには以前にも増して人でごった返しているようにすら見えた。

通常フェスティバルでは、大ステージでのライブを敬遠している筆者だが、今回ばかりはGreen Stageにも見逃せないバンドが目白押しだった。金曜日はThe Vaccinesの迫力あるセットで開幕した。冒頭2分のパンチの利いたイントロで、今なぜ彼らがNMEの寵児たるかを見せつけてくれた。これにKaiser Chiefsのステージ上でのマスター・クラスが続いた。ここではシンガーのRicky Wilsonが雨に濡れるのもいとわず、ステージ前方のカメラマン席を行ったり来たりするサービスぶりで、ファンは大喜び。Battles, フジロック常連の Mogwai 、そして The Chemical Brothersのプレイも靴をびしょ濡れにして見た甲斐があった。残念ながら、同じことはYellow Magic Orchestraには当てはまらない。メンバーの細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一は時代掛かってしまったヒット曲を披露したが、どうにか曲を理解しようとするだけで精いっぱいの観客を魅了することはできなかった。
一方、White Stageは、溢れんばかりにエネルギーで満ちていた。金曜日にはCCSが、Lovefoxxxでフェス期間中もしかしたら一番のセクシーなパフォーマンスを見せ、観客を釘付けにした。British Sea Powerもたくさんの観客を惹きつけ、晴れた日曜の午後のステージでは彼ららしいエキセントリックなプレイで新たなファンを獲得したに違いない。伝説的ミュージシャンLee “Scratch” Perryは自身の75歳という年齢に挑戦し、愛と低く鳴り響くベースでもってステージを繰り広げた。筆者はこのベースが重苦しい曇り空に晴れ間をもたらすのに一役買ったと確信している。

Red Marqueeは雨をしのげる安息の地だが、今年はこの屋内の会場のラインナップは極めて豪華だった。Gruff Rhysは息を飲むような演奏で観客を圧倒した。彼のウェールズ訛りのMCを解す日本人の観客がいたどうかは疑問だが。フェス期間中を通し、The Naked and Famous, Best Coast, The Black Angels , Ra Ra Riotといったバンドも皆、彼らの名声に恥じない演奏を提供してくれた。深夜のライブもなかなかだった。Digitalismはライブ・バンドとしての成長ぶりを見せつけ新鮮な驚きを与えてくれたし、Jamie xx, James Holden , そしてFour Tetはファンが待ち望んでいた通りのパフォーマンスで会場を盛り上げた。最も調子を取り戻したパフォーマンスといえば、何といってもWashed Outだろう。今年のFeaks Festival では文字通りwashed out (「疲れ切った」の意)していた彼らだが、深夜のライブは彼らのスタイルにしっくりきていて、ダークでダンサブルなセットで自らの名誉を挽回した。
他には、Noah and The Whale, Amadou & Mariam andそして Cornershopがthe Field of Heavenステージで素晴らしい演奏を披露した。筆者は自分の目で見ていないのだが、Congotronics Vs. Rockersの演奏は圧巻だったらしい。Gypsy Avalon ステージではRiddim Saunterはカジヒデキとのユニットで観客を喜ばせ、直後に入った彼らが解散するというニュースにふさわしい結末を表しているかのようだった。

今年のフェスティバルは長く記憶に残るものとなったけれど、筆者は聴くことができなかったが本来なら賞賛に値するアーティストももっとたくさんいたはずだ。なぜこんなことになってしまうかとひとことで言えば、フェスティバルの大きな欠点、ロジスティックの問題だろう。フェスティバルで見たいと思うバンドの3組に1組は必ず見逃すはめになるのだが、今年はとりわけ、 British Sea PowerのためにWarpaint と The Killsをどちらも犠牲にしたのは痛手だった。まあ、全部を見るのは無理なのだけど….. また来年があるさ!
執筆:Mark Birtles
翻訳:小堤 明日香
2011年8月16日
